In memory of : 〜を記念して、〜のために;〜を追悼(追憶)して

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午後になって厚い灰色の雲が空を覆い始めた。
午前中はまさに抜けるような秋空だったので、すっかり油断した、と
エドワードは後悔していた。
軍部で紹介された研究者の家を訪れていた。
広い図書室に貴重な文献をたくさん所有しているから、
とのことだったが、
そのうちの数冊を好意で貸してもらえることになった。
「申し訳ないが、私は午後から予定があるのでね。
それは宿舎の方へ持っていって構わないから、
ゆっくり読んでくれたまえ。
私は週末、軍に顔を出す予定になっているから、
そのときに受け取ることにしよう。
また、そのときに話が出来るとうれしいね」
初老の大学教授は穏やかな微笑みと共に送り出してくれた。
革表紙に金箔を押した年代物の書籍だ。大切に扱わなければ、
と覚悟していた矢先のこの曇天である。
不安な気持ちを抱えつつ、帰路を急いだ。

珍しく弟のアルフォンスは同行しなかった。
今回は手分けをして、彼は軍部の資料室の方を担当したからである。
別棟の資料室から戻りながら、曇ってきたな、と空を見上げる。
「アルフォンス君」
向こうから歩いてきたホークアイ中尉が声をかけた。
「中尉。資料室を使わせて頂いてありがとうございます」
「探していた資料は見つかった?」
「いえ、なかなか。近いものは見つかるんですけれど、核心を突いたものは…」
「今日は1日許可を取ってあるから、午後も続けて構わないわよ」
「はい」
「なんだか降りそうな雲行きになってきたわね」
二人でまた、空を見上げる。
In memory of (2)