In memory of : 〜を記念して、〜のために;〜を追悼(追憶)して

3

奥の部屋もしつらえはアンティークだった。手狭だが店舗よりも凝っている。
「ぬれてるものをこっちへちょうだい。あら、ご本人が結構ぬれちゃってるわね」
ジジがハンガーを数本と大き目のタオルを持ってきた。
コートの中から革表紙の本が出てくる。
「あ、これはここに置かない方がいいわ。洋服を乾かそうと思って
小さいけどヒーターを入れちゃったから、
湿気を吸った紙が波打ってしまうといけないでしょう?
お店のほうでお預かりして大丈夫かしら?」
「人から借りた大切なものなんだ」
「わかりました。念には念をいれて金庫にしまってきますから。
上着を脱いでおいて」
タオルを渡す。店舗から戻ってきたジジの目がエドワードの右腕で
とまった。
「あなた機械鎧なの?」
コートかけをヒーターの近くへ持ってきて乾かすものをつるし、
ジジは真っ直ぐ、機械鎧へ突進してきた。
「よくみせてもらっていい?」
「いいけど…」
返事を待たずに腕を捕まれた気がする。
表面の滑らかさを確かめ、ジョイント部分の動きを確かめ、
腕を右へ左へと反転させられる。
その間、ジジは目を輝かせて見入っている。
「すごいわねぇ!フル・オーダーメイドね!あ、左手も見せて」
両手を並べてみて、また感嘆する。
「わぁ、こんなにぴったり同じだなんてねぇっ!
噂には聞いていたけれど、こうやって見せてもらうのは初めてよ!
表面も人の手で削りだした滑らかさ、うっとりするわねぇっ!」
どうしてオレの回りってこういう女が多いんだろう?機械オタク?
怪訝な顔をしているエドワードにジジは気づいて、
苦笑いと共に弁解した。
「あ、ごめんなさい。ちょっとわくわくしちゃって。
機械鎧ってアンティークと通じるものがあると思うの。
すごい手仕事でしょう?私、骨董オタクだから」
どうもありがと、と両手を戻す。
「あのさ、ここの店長さん?は?」
「私よ」
確かにエドワードよりは年上だが、どうもそうとは思われない感じの若さだ。
「先月、うちの婆さまから譲り受けたの。
普段は職人のカミーユ爺さんが奥で仕事をしてるんだけど、
今日はお休みよ」
さて、とジジが立ち上がる。
「私、お昼、これからなのよ。つきあってね」とキッチンらしき部屋へ入っていった。
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