In memory of : 〜を記念して、〜のために;〜を追悼(追憶)して

5

「私、あなたをどこかで見たような気がしていたんだけど」
「なにそれ?口説き文句みたいだ。しかも古典的」
「私に口説かれようなんて、10年早いよ」
ジジが店舗の方へ入っていった。
(なんでぇ、また子ども扱いかよ)
とりあえず背を伸ばさないとなぁ、やっぱり牛乳嫌いを克服しないと
だめなのかなぁ。
「これ、みてよ」
ベルベットを敷いたトレイの上に小さな古い金のロケットが
乗せてある。
片面は彫刻のみ、もう片面には黒いリボンのエナメル装飾で、
表面に「In memory of」と銘が入っているのが読み取れた。
「あけていい?」
「どうぞ、あけてみて」
ロケットに入っていたのは少年の写真だった。
古いものであまり鮮明な写真ではなかったが、
15,6歳と思しきブロンドの少年が微笑んでいた。
「この子、なんとなくあなたに似てるわ」
死んだ少年に似ているといわれるのは複雑だ。
「これもモーニング?」
「だと思うわ。銘とリボンの色から考えてもね。遺髪も…」
写真の対面にブロンドの髪が入っている。綺麗に三つ編みにされて。
「想像だけれど、持っていたのは彼のお母さんじゃないかしら。
恋人という年齢でもなさそうだし。でもロケットの大きさが
女性のものだわ」
金の細工は繊細で、セミの抜け殻のようだとエドワードは思った。
「ね?愛されていたのよ。100年以上も昔の、あなたに似た
この少年も。しまわれていたものではなく、きちんと使われていた
ことがわかるでしょう?ほら、表面に小さな傷やゆがみがある。
彼はこの世を去った後も、この持ち主と生きていたんだと思うわ。
生きて彼女を守っていた。姿形が違っていてもね」
どんな姿をしていても、魂は永遠なのよ、とジジが小さくつぶやいた。
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